廃墟の上に根付く:アルトコインETF市場の極端な分化

2025年11月、米国の暗号資産市場は歴史的な瞬間を迎えた――ビットコインとイーサリアムの現物ETFが約2年間順調に運用された後、ついに初のアルトコインETFが上場承認された。

4つのアルトコインETF――Litecoin、XRP、Solana、Dogecoinは、まったく異なる運命を辿った。XRPとSolanaは合計で13億ドル超の機関資金を集め、市場の絶対的な勝者となった。一方、LitecoinとDogecoinは完全に冷遇され、両者の資金流入は合わせて800万ドルにも達しなかった。

本レポートでは、4大アルトコインETFのパフォーマンスを横断比較し、その市場への連動効果を深く分析、今後のETFが市場動向にどのような影響を与えるかを予測する。

第1部:4大ETFの明暗

XRP:アルトETF最大の勝者

XRPは11月の疑いようのない勝者だ。11月27日時点で、6本のXRP ETFの総資産は6.76億ドル、上場以来流出ゼロの日数記録を維持。11月13日Canary CapitalのXRPC初日は2.45億ドルの純流入を記録し、2025年最強ETFの初日となった。その後も日平均1,500~2,500万ドルの流入が続き、11月24日にはGrayscaleとFranklin Templetonの参入でさらに1.64億ドルが追加された。さらに重要なのは、市場が悲鳴を上げる11月に、XRP価格は2.08ドルから2.23ドルへと7.2%上昇し、唯一プラス成長となったアルトコインとなったことだ。

XRP成功のカギは3つ:

  • 規制の明確さが最も重要:2025年8月、RippleはSECと1.25億ドルのみの和解に至り、Torres判事の「二次市場XRPは証券に当たらない」という判断に基づき、機関投資家に安心感を与えた。
  • 実用的なストーリーが支えに:RippleNetは200以上の金融機関と提携し、機関投資家は「金融インフラ投資」として語れる点が強み。
  • 手数料競争で優位性:FranklinのXRPZは、最初の50億ドル分について2026年5月まで完全無料で提供し、Grayscaleの0.35%手数料を直接狙い撃ち。

ETFはこうした好材料を実際の機関資金流入へと拡大するアンプの役割を果たした。

Solana:6億流入も29%暴落

Solanaの6本のETF総資産は9.18億ドル、累計純流入は6.13億ドルとXRPと肩を並べた。しかし価格は195~205ドルから142.92ドルへと29.2%も暴落した。

システミックリスクの前ではETF流入も無力だった。11月21日、ビットコインが12.6万ドルから8万ドルへフラッシュクラッシュし、900億ドルのオンチェーン清算が発生、Solanaはリスク資産の筆頭として大打撃を受けた。日々2,000~3,000万ドルのETF買いも売り圧力の前では焼け石に水。さらに深刻なのはETFの裁定取引メカニズムで、市場参加者が現物市場でSOLを売却することで下落時の値下がりが加速した。

ただしSolanaには「ステーキング収益」という独自の強みがある。全Solana ETFは当初から年率6~8%の収益を提供し、BSOLは0.20%の運用手数料控除後でも約7%の純収益を実現。「稼げるETF」として、価格が暴落しても機関投資家を引きつけた。

LitecoinとDogecoin:市場に見捨てられる

かつて「デジタル・シルバー」と呼ばれたLitecoinは市場から見放された。LTCCの総資産はわずか742万ドルで、XRP初日の3%にも満たず、24時間取引額は26.7万ドルのみ。ストーリー不在(「より速いビットコイン」は時代遅れ)、手数料劣勢(0.95%はBTC ETFの2~3倍)、流動性の罠(AUM低迷がスプレッド拡大・機関投資家の敬遠を招く)がLTCの魅力を大きく損なっている。

Dogecoinはさらに悲惨だ。3本のETFで総資産648万ドル、純流入220万ドル。GrayscaleのGDOGは初日の出来高がわずか140万ドル。ミームコインは機関投資家の需要と根本的に相容れない:年インフレ3.3%による永続的希薄化、供給上限なし・スマートコントラクト/DeFiなし、「イーロンが好きだから」だけで買うことはできず、さらにクジラによる9~11月の売りが市場の悲観を助長した。

第2部:嵐の中で生まれる

ビットコイン・イーサリアムETFの惨憺たる11月

アルトコインETFのパフォーマンスを理解するには、より広い市場背景の中で捉える必要がある。2025年11月は、ビットコイン・イーサリアムETF上場(2024年1月)以来最悪の月となった。11本のビットコイン現物ETFは11月に計35~37.9億ドルの純流出を記録、さらに恐ろしいのは流出が続いたことだ。11月の20取引日のうち16日で純流出が発生、その割合は80%に達した。

11月21日、ビットコインが8万ドルまでフラッシュクラッシュしたその日に、ETFの1日流出額は9.03億ドルと過去2番目の記録に。最大規模であり機関投資家に最も支持されるBlackRockのIBITも例外ではなかった。「永久機関」と見なされていたこの商品も11月だけで22億ドル流出し、上場来最悪の月となった。イーサリアムETFも同様に悲惨で、9本の現物ETFから合計5億ドルが流出した。

両者を合わせると、ビットコイン・イーサリアムETFは11月だけで40億ドル超の流出。これは機関投資家の暗号資産市場への信頼崩壊を如実に物語る。ビットコインが12.6万ドルから8万ドルに暴落した際、ヘッジファンドやファミリーオフィス等の機関が損切りで撤退、ETFの容易な償還メカニズムがこの流れを加速させた。

2つのパラレルワールド

この瓦礫の上で、アルトコインETFは13億ドルの流入を集めた。相反して見えるが、実際は2つのパラレルワールドの存在を示している。

一:伝統金融機関の撤退。 ビットコイン・イーサリアムETFの40億ドル流出は主に伝統的な金融機関によるもの。これら機関は2024年初頭のBTC ETF上場時に大量参入し、ビットコイン4~5万ドルで買っていた。11月に12.6万ドルを付けた時点で帳簿上200~250%の利益。フラッシュクラッシュでリスク管理ルール(ドローダウン20~30%超で強制縮小)により撤退。こうした機関はリスクが高まると暗号資産全体から撤退し、他の資産へローテーションしない。

二:暗号資産ネイティブ機関の参入。 アルトコインETFの13億ドル流入は、まったく異なる投資家層による可能性が高い。暗号資産ネイティブのヘッジファンド、ベンチャーキャピタル、暗号信者の富裕層などだ。彼らは市場変動への耐性が高く、11月の暴落も撤退の合図でなく新商品投資の好機と見る。さらにアルトコインETFは上場2~3週間目で、多くの機関は上場前に初期注文を組んでおり、短期的な変動ではキャンセルされない。

この市場分断は重要な現象を説明する:なぜ11月21日フラッシュクラッシュ当日に、ビットコインETFは9.03億ドルの流出となったのにSolana ETFは約1,200万ドルの流入を維持したのか?それは両ETFの保有者がまったく異なる投資家層であり、リスク許容度・投資目的・意思決定プロセスが異なるからだ。

新商品効果の限界

これは「ビットコイン資金がアルトコインにローテーションした」のではなく、むしろ「新商品効果」――新ETFへの初期配分、マーケットメイカーの建玉、メディア報道による個人投資家資金という、上場時に自然発生する現象だ。

新商品効果には時間的限界がある。Solana ETFは11月26日に初の流出を記録し、21日連続流入の記録が途絶えた。この転機は重要で、「新商品ハネムーン期」の終焉と「実力による市場検証」の始まりを示す。初期注文や建玉が完了し、メディアの熱が冷めると、ETFは資産の本質的価値で資金を集めなければならない。

これがLitecoinとDogecoinが惨敗した理由だ。両者も「新商品」ラベルを享受したが、ハネムーン期ですら流入は800万ドル未満。新商品効果には限界があり、強いストーリーと実用価値のない資産はETF化しても資金を惹きつけられないことを示している。

総括:時代のチャンスと課題

2025年11月のアルトコインETF上場は、暗号資産市場が新たな段階に入ったことを象徴する。単なる新商品投入ではなく、市場構造と参加者の根本的な転換だ。機関投資家は今や規制適合で利便性ある手段でアルトコインを組み入れられ、伝統金融と暗号資産の橋渡しが加速している。

ETF時代において、「知名度」や「歴史的地位」は資金を集める十分条件ではない。強い実用ストーリー、明確な規制位置づけ、活発なエコシステムを持つ資産だけがETF化の恩恵を本当に受けられる。

2026年中頃には、米国市場で200~250本の暗号資産ETFが取引されている可能性がある。しかし、すべてが成功するわけではない。LitecoinやDogecoinで見たように、ストーリーや実用価値のない資産は淘汰される。

ETF市場は淘汰の波を経験するだろう。上位5~10本が大半のシェアを獲得し、規模の経済とネットワーク効果を享受する。中位層は20~30本が何とか存続。それ以下の大多数は1~2年で清算される。このプロセスは痛みを伴うが不可欠だ。市場競争を通じて、真に価値ある資産が選別される。

BTC-1.9%
ETH-4.19%
LTC-3.92%
XRP-3.28%
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