ビタリック・ブテリンは新たな研究提案を発表したが、最も頻繁に取り上げられている質問—ブロックチェーンが直接AIモデルを実行できるかどうか—には答えず、別のアプローチを採った。
この研究は、イーサリアムがAIやAPIの利用において、利用量に応じた課金モデルを採用したプライバシー保護型の決済・清算層となる可能性を示唆している。ビタリック・ブテリンとダビデ・クラピスによるEthereum Researchの論文は、実際のチャンスはLLM(大規模言語モデル)をチェーン上に載せることにあるのではなく、むしろユーザーやAIエージェントが個人情報を漏らすことなく、支払いデータの追跡痕跡を残さずに何千回ものAPI呼び出しを行えるインフラを構築することにあると強調している。
AIエージェント(agentic AI)が試験段階から企業レベルの展開へと移行しつつある今、重要な時期といえる。ガートナーは2026年末までに、企業アプリケーションの約40%がタスク別のAIエージェントを統合し、2025年のわずか5%未満から大きく伸びると予測している。
ガートナーは、2025年には企業アプリのAIエージェント利用が5%未満から2026年末には40%に増加すると予測している。## AIエージェントの普及段階
この変化は、ソフトウェアが自動的に大量のAPI呼び出しを生成する世界を意味する。こうした状況では、従来の利用量に基づく決済インフラは補助的な役割から、戦略的なインフラ層へと変貌を遂げる。
現在の計測・課金システムは、ユーザーに二つのモデルの選択を迫る。
提案されているのは、Rate-Limiting Nullifiers(RLN)を用いた決済・不正防止の仕組みであるZK API利用クレジットの導入だ。
RLNは、匿名性の高いシステムにおけるスパム防止のために設計されたゼロ知識ツールである。本研究では、これを有料サービスへのアクセスに再利用し、利用量に応じた課金を実現する。
動作の流れ:
例示:
「一回のチャージあたり複数回呼び出す」モデルを想定し、オンチェーンの活動はアカウント数や決済頻度に応じて増加し、AI推論の総量ではなく、アカウントの数と頻度に基づく。
また、コストの変動もサポートし、ユーザーは最大支払い額を前払いし、サーバーは未使用分の署名済みチケットを返却、さらにプライバシーを保ちながら未使用分を蓄積し、追加チャージなしで利用枠を拡大できる。
この提案は、オンチェーン決済インフラが一定規模に達した状況下で登場した。
この設計は、LLMをチェーン上に載せることを意図的に避けている。ブロックチェーンは計算能力や推論速度で競うのではなく、中立的な決済層、プログラム可能な担保、検証可能な実行メカニズムの役割を担う。
AIの推論はオフチェーンで処理され、ブロックチェーンは支払い、計測、紛争解決を信頼性高く行う役割を果たす。これにより、ユーザーは各サービス提供者を信頼したり、個人情報を明かしたりする必要がなくなる。
AI提供者が保証金を受け入れ、EthereumやLayer 2のスマートコントラクトを用いて担保の管理、返金、紛争処理を行えば、このネットワークはAI商取引の実行層となり得る。これは、ステーブルコインやDeFiの決済層としての役割に似ている。
決済メカニズムは暗号的にリンクできない可能性がある一方、メタデータの相関リスクも存在する。サーバーは、時間パターン、トークン数、キャッシュヒット率、行動の兆候などを通じてユーザーを結びつけることができる。
一部の意見では、「バケット」方式の価格設定や固定された入出力層を用いて情報漏洩を抑える提案もある。暗号プライバシーと行動メタデータの間の緊張関係は、設計が真の匿名性を実現できるかどうかの決定要因だ。
実装面では、RLNは現在、Privacy and Scaling Explorationsのプロジェクト内で積極的に維持されていない。ZK API利用クレジットを実運用に導入するには、フォークや新たなツールの構築が必要となる可能性がある。
RLNJSのベンチマークは次の通り:
これはあくまで初期のパフォーマンステストであり、モバイル端末や大規模ZK回路のスケールに関する課題も残る。
技術的な側面だけでなく、市場の調整も重要だ。Web2のAPI提供者はすでに支払いインフラと明確な法的枠組みを持ち、取引に個人情報を付与している。彼らをZKモデルに移行させるには、コスト優位性やプライバシーを必須とする新たな顧客層の獲得を示す必要がある。
このモデルが受け入れられれば、Ethereumの価値の位置付けは、汎用計算プラットフォームから、デジタル商取引のための中立的な実行層へと大きくシフトする。
ブロックチェーンは、経済ルールが検証可能な形で実行される決済層とみなされ、アプリケーションの直接実行場所ではなくなる。
その結果、次のような可能性が考えられる。
プライバシーを重視した決済を条件とするユーザー層に対して、価値を提供できる機会:企業は支払いログの情報漏洩を懸念し、AIエージェント構築者は監査可能だが監視されない計測を求め、プライバシー重視のユーザーは匿名で高頻度アクセスを望む。
Ethereumは、支払いの実行、紛争解決、匿名の有料アクセスを担保できると提案されている。これは従来のインフラでは構造的に難しいとされる。実現の可否は、メタデータの相関問題の解決、ZKの堅牢な展開、経済的価値の証明にかかっている。これらをクリアできれば、採用の可能性は高まるだろう。
ヴォン・ジエン
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